ニューヨークで音楽家としてやって行くためには、常に最上級であることが求められる。コントラバスの演奏は身体的に負担のかかりやすいものだ。コントラバスは恐ろしく巨大な楽器なので、そんな楽器を高いレベルで何時間も毎日演奏することは、どうしても人間の体に不自然な体勢を強いることになってしまう。アレクサンダーテクニークは、演奏するのにできる限り無理なく楽なやり方で自分の体を使う助けになる。体が楽器におおいかぶさるような演奏法を防いでくれるので、動きやすく、広がりを私に与え、左手で音を作るのがとても簡単になった。演奏する私の背が高くなったので、ステージ上での存在感が増し、自分自身に自信を与えてくれた。ステージ上での余計な緊張がないと、いつでも自分の持てる十二分の能力が発揮できる。
細井先生のレッスンで、彼女の出す指示は明瞭簡潔だ。けれど、決して力で強いることはない。彼女が私の姿勢に気づきを促すために手をつかうとき、決して私を筋力で押したり、引いたりすることはない。彼女の手のタッチは私の気づきを促し、導き、アレクサンダーの先生が何を教えてくれるものかを理解させてくれた。数回のレッスンのあと、私は歩く、椅子から立つー座るといった日常生活における課題が以前よりもずっと簡単になった。それはニューヨークの我が家に帰って、楽器の練習をした時にすぐさま、その違いに気づいた。ゆったりとした状態でコントラバスを弾くことだって可能なことだし、いらぬ心配に心を悩ますこともない。
私は自分の背中と使い方を探求し、可能な限り効果的に使えるようになりたいので、アレクサンダーレッスンを継続しようと考えている。私が細井先生から受けたのはたった3回のレッスンにもかかわらず、アレクサンダーテクニークからとてもおおくの恩恵を受けた。もし、日本へ行くのがタクシーで街まで出かけるぐらい簡単だったら、絶対に細井先生にレッスンを続けてもらうのに。先生の言葉はまだ私の頭の中でいつも鳴り響いている。座るとき、練習をするとき、ご飯を食べるとき、何をする時にも、いつもいつも。「背中をもっと使って」「背中を信頼して」。細井先生、どうもありがとうございました。必要な時にいつでも自分の持てる100%の能力で演奏できるよう、正しい方向づけを促して下さいました。